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山について語るときに僕の語ること(What I Talk About When I Talk About Mountain)

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2009年 09月 07日

北岳バットレス第4尾根 スーパートポ

世に出回っている北岳バットレス第4尾根のトポ(ルート図)はアバウトでわかりにくいので、この際自分で書いてみました。
まだ完全ではないと思うので、今後また行く機会があったら、随時アップデートしていきたいと思います。

<アプローチ>
大樺沢二股から八本歯のコル方面に約15分登ると右からヒドンガリー(涸れ沢)が入る。明るければ明瞭だが、暗いと気づかずに通り過ぎるかもしれない。
ヒドンガリー出合から20〜30分でbガリー出合。bガリーも涸れ沢である。
左下に小さなスラブ状の岩が出てくれば(ペンキで右を指す矢印が記されている)、bガリーはすぐである。出合の少し上(bガリーの中)には大きなボルダーがあり、目印となる。
bガリー出合を過ぎてさらに一般道を登れば、水の流れるcガリー(バットレス沢)が右から入る。
bガリー大滝を目指す場合、ここまで来たら登りすぎなので引き返さねばならない。
北岳バットレス第4尾根 スーパートポ_d0138986_07485181.jpeg



①bガリー大滝~4尾根
bガリー出合から、丸い大きなボルダーを目印にbガリーへ入る。踏み跡はbガリーの左(右岸)につけられているので、踏み跡を見つけて、ガリーから右岸の踏み跡に入る。踏み跡は以前は比較的明瞭であったが、最近では何箇所かわかりにくい箇所もある。
年によるが、bガリー大滝取付きの下は例年7月末頃まで雪渓が残り、アイゼンやピッケルが必要な場合がある。また、雪渓とbガリー大滝取付きの間にシュルンドが開き、取付きが困難な場合もたまにある。
bガリー大滝は正面右手の溝状がルートで、登りやすい。通常2ピッチで登る。大滝を登り終えたらアプローチシューズに履き替え、踏み跡を辿る。左に進み支尾根を越えればcガリーに出る。cガリーを渡れば目指す4尾根である。cガリーを渡り、そのままトラバース気味の踏み跡をたどると、後述する「4尾根下部」の途中に出るが、cガリーを少しつめてから4尾根の大テラスに上がるルートが一般的であろう。cガリーを渡り、cガリー右岸を少し登ると、赤ペンキで大きく「4」と書かれた数字が書かれた岩が現れる。ここから易しいスラブ状の岩を登れば、正規の4尾根1ピッチ目取付きである「大テラス」に出る。

②dガリー大滝、第5尾根支稜など
cガリー(バットレス沢)は水が流れているので間違えることはない。ただ、すぐ上で出合うdガリーは、知らぬまに渡っているかもしれない。踏み跡はdガリーの右岸側から入るようにつけられている。一般登山者が間違えないように赤ペンキで❌がつけられている(消えかけているが)。この踏み跡はしばらくdガリー右岸を登ったのち、dガリーを渡ってcd中間稜に入るが、ここも迷いやすい。迷ったら、dガリーの中に入り、cd中間稜に上がれそうな踏み跡を探すとよい。cd中間稜に入れば、その後踏み跡は比較的明瞭である。樹林の中の急登を終えれば開けたお花畑に出る。明るくなっていれば、バットレス下部岩壁の眺めがよいところだ。
正面の三角の岩がピラミッドフェース。取付き付近に十字クラックが発見できるだろう。十字クラックの右の白い岩がcガリー大滝。十字クラックの左のガリーがdガリーである。5尾根支稜やdガリー大滝取付きへは、お花畑の中の踏み跡を辿り、途中から左にトラバースする踏み跡に入る。このあたりでは通常明るくなっているので迷うことはないだろう。
5尾根支稜はどこからでも取り付けるが、左端のハーケンが1本ある小テラスからが正規であり登りやすいし、荷物も広げやすい。ただし、雪渓が残っている場合は臨機応変となる。

5尾根支稜は下部岩壁で一番容易だ。残置は少ないが問題ないだろう。トポでは2ピッチとなっているが、20~30mで切って3ピッチで登るとよい。平坦なテラスに出て5尾根支稜は終わる。
さて、旧いトポも最近のトポも、すべて下部岩壁はこれで終わるかのように記述されており、それだけ見ると5尾根支稜終了点から横断バンドに入るように錯覚する(というか当然思いこむ)。が、実は横断バンドはまだ上である。
5尾根支稜終了点からdガリーを少しロープレスで上がり、傾斜が増したところで再びスタカットに切り替えてdガリーを攀じる。ピンはないがキャメロット0.5、0.75などが要所で決まる。30mほどで横断バンドに出て、アンカーを見つけることができる。
4尾根へはそこからやや下り気味の踏み跡を右に注意して歩くと崩壊箇所となる。崩壊箇所手前から右上バンドを上がればピラミッドフェース(従来の6ピッチ目)取付きである。
4尾根へ行く場合は崩壊箇所をトラバースするがけっこう怖い。ここが崩壊してこのトラバースが危険となってしまったために、近年4尾根を目指す人はbガリーからアプローチするようになったのである。心配ならロープを使おう。
十分注意して崩壊箇所のトラバースを終えれば、尾根を回りこんですぐに「4尾根下部」1ピッチ目の取付きとなる。ここはトポ上の4尾根取付きではなく、あくまで後述する「4尾根下部」取付きなので誤認なきよう。
4尾根を登る場合、ここから「4尾根下部」を登ってもよいし、さらに踏み跡をたどってcガリーに出、前述したようにcガリーをつめて「4」のペンキマークのところから「大テラス」に出てもよい。
なお、下部岩壁のcガリー大滝を登れば、崩壊箇所のトラバースをせずに4尾根下部取付きで出られるわけであるが、cガリー大滝はむかし登って難しかった記憶がある。dガリー大滝は出だしの凹角をのぞけば難しくはないが、いずれにしろ5尾根支稜が一番登りやすく、かつ落石からも安全である。


<4尾根下部について>
かなり明瞭なルートであり、昔から登られているはずなのに、私の知るかぎり現在に至るまでトポに一切記載がないのが、これから記す「4尾根下部」である。

1ピッチ目) 崩壊地の怖いトラバースを終え、尾根を回り込むと平坦な取付きに出る。そんなに易しくはないが悪くないピッチ。10~15mくらいでリングボルト2本の打たれた2ピッチ目取付きに出る。
2ピッチ目)ピラミッドフェース(6ピッチ目)取付きからトラバースしてくると、このピッチの取付きに出る。
きれいな岩に走るクラックを登る。ピンはほとんどないので、キャメロット0.5~1番などが有効。空身なら5.6くらいなのだろうが、荷物があると5.8くらいに感じられる。4尾根全体を通して核心のピッチの一つである。
3ピッチ目)頭上はハングしているため、右から巻いて登る。木をつかみながら濡れていることの多いスラブを登り、踏み跡を左にたどってリッジに戻ったところでピッチを切る。
4ピッチ目)10mほど登るとビレイ点があるので短く切る。
5ピッチ目)頭上のかぶりぎみのリッジを登るが、右から巻き気味に取り付くこともできる。途中右にせり出した小さな岩を越えるところがワンポイントだけちょいムズ。
6ピッチ目)10~15mの難しくない岩を登ると、ようやく「大テラス」である。ここはルート中で一番の休憩適地だ。それにしても、ここまでの下部6ピッチがトポに記載されていないのは、かえすがえすも不思議である。
ここまでよくわからないで登ってきて、ここが本当の“取付き”だと気づいたものは、「えっ、こんなに登って、やっと取付き!?」と、必ず驚くことになる。

※4~5ピッチはリンク可能。つなげた方がベター。

<4尾根>
1ピッチ目)ハンドサイズよりやや広めのきれいなクラックを登る。ピンはわずかしかないので、キャメロット3番があると安心である。荷物背負いグレードで5.8くらいか? 4尾根下部2ピッチ目とならび、4尾根全体を通しての核心部と言える。20m
なお混雑しているとき、このピッチは右から巻いて登ることもでき、そちらの方が易しい。
2ピッチ目)リッジの左気味を35mほど登り、さらに10mほど右上(易しい)すると通称「白い岩のクラック」下に出る。45m
3ピッチ目)白い岩のクラックを登る。易しい。35m
4ピッチ目)10mほどで三角形の小垂壁の下。10m
5ピッチ目)小垂壁を越え、そのままリッジをたどればとうとうマッチ箱の頭である。30m
6ピッチ目)懸垂下降15mくらいでレッジへ下りる。
7ピッチ目)旧・枯れ木テラスまでは1ピッチで届かないので、ある程度ロープを伸ばし、切る。
8ピッチ目)旧・枯れ木テラスからリッジを左にトラバースし、城塞チムニーの下まで。
9ピッチ目)チムニーを登り、ハイマツでビレイ。この最終ピッチは少し難しい。0.3、0.4番サイズのカムがあると助けになる。
目の前の易しい岩を40mほどロープレスで上がれば、ゆっくり休める広場に出て登攀終了となる。
広場からは左に上がる踏み跡をたどる。お花畑の中のほぼ明瞭な道。約20分で北岳山頂に至る。

※上部崩壊以降のルートどりに書き直しています(2013年7月)





by uobmm | 2009-09-07 06:41 | 南ア(無雪期バリエーション) | Trackback


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