私はおととしの春まで4年ばかり、山梨県に住んでいた。
にもかかわらず、山梨県を代表する景勝地・昇仙峡を訪れたことがなかった。
昇仙峡は山梨はおろか、日本を代表する観光地の一つであるようだ。
山梨はおろか、日本を代表する観光地であるからこそ、これまで訪れる機会がなかった、とも言える。
山梨県民ではなくなった今、今さらにして登ってみれば……。
この山はまごうことなき名山だった。
ロープウェイの終点から最高点の弥三郎岳まで徒歩15分で行けるのだが、それでも昇仙峡の最高地点たるこの山は実によい山である。
頂上直下のまるいドームは、さながらミニ・ハーフドームといった風情で、ある意味瑞牆山よりもスリルがある。(より正確に言うなら、ミニミニミニミニミニ……ハーフドームです。念のため)。
そして、ミニ鳳凰三山的な白砂の稜線は美しく、展望も極上だ。
観光地化され、俗化された山というのは、別の見方をすれば、そこがもともと観光地化されるほど素晴らしい場所であったからと言えなくもない。
筑波山しかり。立山・室堂しかり。千葉の鋸山しかり。上高地もむろんしかり……。
そういう意味では、山梨の羅漢寺山もまったくもってその系譜につながると言えそうだ。
羅漢寺山は名山である。
あまたの名山、名峰つらなる山梨県において、この山を私は、山梨10名山の一つに選定したいと思う。
じゃあ、10個選べと言われれば、たぶん困るのですけどね。
↑ ツツジ狂い咲き
※お知らせ
『岳人』1月号の八ヶ岳特集の中に記事を書いています。
よろしければ見てみてください。