今回の剱岳は長次郎谷から頂上を目指しました。
長次郎谷は「ちょうじろうたん」と呼びます。
長次郎谷左俣は、ご存じ剱岳の“初登ルート”です。
剱沢小屋を4時前に出発しましたが、いまの時期、その時間でもすでに薄明るくなりはじめていました。
「岩と雪の殿堂」とは剱岳に冠された言葉ですが、長次郎谷を登る時、いつも私はそのあまりにも的を得た修辞句を頭に浮かべます。
日本でもっともアルプス的な景観が味わえる場所が、剱岳のこの長次郎谷ではないかと私は思います。
長い登りをへて長次郎のコルに登りつけば、周囲の風景がガラリと変わります。
最後の急な雪壁を登ると、八ツ峰のぎざぎざの威容が背後に間近く、さえぎるもののないすさまじい展望が広がります。
文句のつけようのない天候の中、静かな山に浸り切り、雄峰・剱岳を存分に味わうことのできた幸福な一日でした。