Matthes Crest Traverse from South to North。
ハイシエラ・クライミング2日目に登ったこのルートは実に特異なルートだ。
長さ2㎞近くに及ぶ、すさまじいナイフエッジの稜線をえんえんと越えていく。
日本やヨーロッパや韓国で、岩稜ルートやリッジルートと言われるルートを登ってきたが、このMatthes Crestに比べると、それらすべてがハイキングか子供の遠足に感じられてしまうほど、このルートはすごかった。
5.7というグレードと思ってなめてかかったらとんでもない。
取付の3ピッチのクライミングから、いきなりアドレナリンが出はじめる。
そして頂稜に出てみれば、そこには眺めたこともないようなすさまじい景観が広がっていた
30年近くクライミングをしているが、こんなルートは初めてだった。
こんな景色は初めてみた。
ルートのほとんどを、20~25m間隔のロープで結びあい、タイトロープ(同時行動)で進んだ。
最初から最後まで気を抜ける箇所がほとんどなく、終始緊張感が持続した。
標高3,000mを越える稜線は風が強く、登山者は私たちだけで、景色は夢のようだった。
今回ハイシエラで登ったルートはすべてが最高!と言えるほどに素晴らしかったが、その中でも Matthes Crest は個人的には一番印象深い。
大げさではなく、本当に一生の思い出に残るルートだった。