2009年7月5日~6日
欅平は険しい峡谷のどんづまりのようなところにある。
富山(魚津)から小一時間ローカル電車に揺られ、さらに宇奈月温泉から1時間半近くもトロッコ電車に乗ってようようたどり着けば、“秘境”という言葉は、まさしく黒部のためにあるのだなあ、とつくづく思う。
その欅平からさらに1時間ほど歩いたところに祖母谷温泉はあるのだが、林道が工事中ということで、今回は車で迎えに来てもらった。
あとから考えると、やはり歩いて訪れたほうが感動があったかもしれない。
いったいに、富山の山小屋で“外れた”という思いを味わったことがないが、祖母谷温泉もその例にもれなかった。
小屋の方々の素朴な人柄と、飯のうまさは、富山の山小屋に共通したものだ。
旧き飾らない小屋の畳敷きの食堂に座り、ぼんやりと外を眺める。
せせらぎの音、山の匂い、空気の涼やかさ……。
それらが私には好ましく、そしてどうしてか懐かしい。
翌日は白馬岳を目指したが、1時間半ほど登ったところでどしゃぶりになり、下りることにする。
その日は不帰岳避難小屋泊の予定であった。
清水(しょうず)岳から上のお花畑に思いを残しつつ、4日間の山行を2日で切り上げ、静かな黒部をあとにした。