山について語るときに僕の語ること(What I Talk About When I Talk About Mountain)

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2008年 01月 29日

山岳ガイドの喜び

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自分の好きなことを仕事にできていいですね。
お客さんなどから時おりそんな言葉をいただく。
自分が好きな、自分が人よりも得意な、山登りを仕事にできたという意味ではまったくその通りだし、私は恵まれていると思う。
けれども、仕事で山に行けてわー楽しい!とか、仕事で好きなクライミングできてチョーハッピー!というほど、さすがにそこまで単純ではない。
なぜなら、私たちの仕事はまずお客さんの安全を守ることであり、その次にお客さんに楽しんでいただくことだからだ。自分が楽しむことが目的ではないのである。
それじゃあ好きな山に行っても楽しくないのか?と言われれば、それはもちろん楽しい(笑)。

d0138986_0544950.jpgただ、プライベートな山行と、ガイドとして仕事で行く登山とでは、喜びの性質が異なるのだ。
山岳ガイドの喜びは、自分自身が好きな山に行ける喜びではなく、何よりもお客さんが心から喜んでくれたことによって生みだされる。
こう書くとひじょうに善人ぶって聞こえるかもしれないが、このことは山岳ガイドという職業のきわめて本質的な部分に関わることでないかと思うのである。
だから私は、行く山は正直どこでもよい。難しい山でもいいし、易しい山でもいい。ヒマラヤでもいいし、ウラヤマでもいい。ガイドで行くのに、簡単な山だからつまらないとは今まで思ったことがない。

例えば、すごくおいしいお店を発見したとする。初めてそのお店に行き、素晴らしい料理を食べ、大満足する。次に、そのお店に友人を連れて行く。そして友人が、「このお店、最高! ほんとおいしい! よくこんないい店、知ってましたねえ!」と喜んでくれたとしたら、そのことがそこで食べるおいしい料理よりも、大きな喜びをもたらしてくれはしないだろうか? また逆に、友人がたいして感動してくれなければ、いくら自分にとっておいしい料理であっても、今度はほとんど満足感を味わえないのではあるまいか。山岳ガイドの喜びはちょっとこれに似ていなくもない。(なんて、変なたとえですみません)。

今から何年も前に行った秋の雲取山のことを、あの時の雲取山はすばらしかった、と折りにふれ口にするお客さんがいる。数年前にご一緒した甲武信岳山頂からの展望の素晴らしさを、今でも感動的に語ってくれる方がいる。
雲取山も甲武信岳も、多くの登山者にとっては山岳ガイドを必要としないレベルの山だろう。
「まさか、自分が雲取山に行けるなんて夢にも思わなかった」。
しかし、あるレベルの登山者たちにとっては、雲取山や甲武信岳でも大変な山であり、そんなふうに心から喜び、感謝してくれるのだ。
それこそガイド冥利である。
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「ガイドの職業こそ、こよなく美しい。けがれを知らない土地でその職務を果たすのだから。
いまの世の中には、もうわずかなものしか存在していない。寒さも、風も、星も。すべては打ち壊されてしまった。だが山では、忘却の静けさの中で……     ――略――

ガイドは彼(自分)のため登るのではない。彼の山々の扉をほかの人たちに開くのだ。どの登攀がとくにおもしろいとか、どこの曲がり角で眺めが急にすばらしくなるとか、どこの氷の山稜はまるでレース飾りのようだというようなことを知っているが、口には出さない。彼の報いは、相手がそれを発見した時の笑顔の中にあるのだから」

ガストン・レビュファ 「ガイドの職業」より
(『山こそ我が世界』所収  ガストン・レビュファ著/近藤等・訳 山と渓谷社)

by uobmm | 2008-01-29 00:08 | エッセイ | Trackback
2008年 01月 27日

僕が山をはじめたわけ

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私が山をはじめた動機はわりと単純である。
それはきれいな景色が見たかったからだ。

山に行けばきっときれいな景色が見られるのだろう……。
3,000mの高山では“雲海”というものが見られるらしい……。
雪山では夏山とまたちがう、夢のような景色が見られるかもしれない……。
まだ山登りを知らぬ頃、山の雑誌や本を読み、そんな憧れをふくらませていた。

大学山岳部1年生時の夏山合宿で2年上の先輩に、
「松原は景色見てきれいだ、きれいだって、そればかり言ってるな」
と、なかば感心、なかばあきれたような口調で言われたのを覚えている。
剱岳の三ノ窓でのことだった。
自分で言うのも何だけど、私は美しい風景に対する感受性が、昔から人より少し高いと思う。それはおそらく遺伝的に持っている体質のようなものだ。

本格的に登山をはじめ、美しい風景を見ること以外の、山のさまざまな魅力も幸いにして知ることができたけれど、その“景色感動体質”があったからこそ、私は今までこれほどまでに深く、長く、山とかかわって生きてきたのだと思う。
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by uobmm | 2008-01-27 00:54 | エッセイ | Trackback
2008年 01月 25日

峰ノ松目沢

2008年1月25日(金)
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強烈に冷え込んでいる。今朝は茅野駅でマイナス15度だったそうだ。
そして八ヶ岳では新雪が40~50㎝。今冬初めての多量の降雪である。
こんな時のアイスクライミングは行き先を選ばないとラッセルが大変だし、それ以上に雪崩が怖い。それで峰ノ松目沢に行くことにした。というのも、友人のガイドが峰ノ松目沢を昨日登っており、大丈夫との情報を得られたからだ。

d0138986_232432.jpg降雪のあとの山は何かと大変だが、景色の美しさは格別である。雪に被われた木々は、さながらクリスマスの飾りか何かのように、完全無欠の純白である。
冬型が強く、八ヶ岳は荒れているかと思っていたが、空はほとんど快晴、日差しも思ったより暖かだった。むろん稜線上は雪煙たなびき、かなり吹いていることがうかがわれたが、私たちのいる小さな沢の中は風もなく、絶好のアイスクライミング日和である。

静かな沢をつめ、美しい樹氷と空を仰ぎながら、Aさんとの1年ぶりのアイスクライミングを楽しんだ。今晩赤岳鉱泉でゆっくり泊り、明日もう1日登れるなら言うことはないのだが、今日は残念ながら日帰りである。

金色に輝く横岳西壁に見送られて、またぐっと気温の下がりはじめた山を足早に下った。
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by uobmm | 2008-01-25 23:21 | 八ヶ岳(アイス) | Trackback
2008年 01月 24日

城山~発端丈山

2008年1月24日(木)
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発端丈山(ほったんじょうやま)という風変わりな名前の、なおかつ有名でもない伊豆の低山は、本州にあまたある富士の展望峰の中でも、あるいはもっともすぐれた頂の一つかもしれない。

クライマーにはお馴染みの伊豆・城山(じょうやま)から発端丈山へと歩き、内浦湾へと下る小さな縦走路は、近年とみに人気の高まってきた沼津アルプスに勝るとも劣らない、すてきな冬の散歩道だ。
東京に初雪が降った翌日の今日、青空は戻ったが気圧配置は強い冬型となり、この伊豆の山でもゴオゴオと音を立てて北風が吹き荒れている。しかし、風が当らない場所ではその日差しは春のように暖かだった。

こじんまりとした城山の山頂から素晴らしい展望を楽しみ、杉林の中の緩やかな道を発端丈山へと辿る。
うれしくなるような明るい日差しを浴びて、発端丈山への最後の坂を登りつめると、そこにはこれまでに見たどんな富士よりも素晴らしいと思えるほどの絶景が広がっていた。
雪をいただいた真白き富士の前に広がる青い海。美しい海岸線。ほとんど完璧な景観と言っても過言ではないだろう。

知られざる富士の最高の展望台。それがこの発端丈山だ。
富士山が白く輝く季節、好天を狙ってぜひ登ってほしい文句なしの名山である。
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by uobmm | 2008-01-24 21:39 | ハイキング | Trackback
2008年 01月 24日

雪山研修

2008年1月17日(木)~18日(金)
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登山ショップの方々と八ヶ岳で雪山の研修。
赤岳鉱泉周辺でまずは雪崩について。積雪層の観察、雪崩ビーコンの使用法、埋没体験等々。
各社のビーコンを用意してきてくれていたので、使い比べることができ、私にとってもすごく参考になる。
小屋に戻り、雪山装備のことなどについてさらに討議。

翌日は硫黄岳に登る予定だが、朝雪が降っていたので、小屋内で背負い搬送、ツェルト搬送の研修。
少し天候が回復してきたところで硫黄岳に向けて出発した。

私はこの研修の講師なわけだが、教えながら学ぶこと、そして実際に教えられることもたくさんある。
講師という立場に立つのは楽なことではないけれど、職業として山岳ガイドをする以上は、定期的にこのような経験を持つことが、自分のためにもとても大切なことなのだと思った。
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by uobmm | 2008-01-24 00:28 | 八ヶ岳(積雪期) | Trackback
2008年 01月 22日

湯河原幕岩

2008年1月15日(火)
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Yさんは以前少しだけクライミングの経験がある。近郊の岩場で何度か練習し、二子の中央稜などのマルチピッチも登った。けれどお仕事の都合などもあり、やりたい気持ちはあったものの、クライミングから遠ざかってしまった。

そして今日は、Yさんが7年ぶりにクライミングを再開した記念すべき日となった。
これからは時間もある程度つくれそうだし、またやっていきたいそうだ。
てんとうむしロックのかわいらしい岩を、何とか上まで抜けたYさんは心からうれしそうだった。自分がこの世界に再び戻れたことを心底喜んでいるように見えた。

Yさん、これから一緒にクライミングしましょう! 今年はきっと北岳や剱の岩にも行けますよ。
そうそう、その前に、今回トライした「アナザガール」(5.10a)が登れたらいいですね。

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by uobmm | 2008-01-22 22:06 | クライミング | Trackback
2008年 01月 21日

赤岳

2008年1月20日(日)
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西から低気圧が近づいている。今日の予報は終日くもり。けれど、外に出るとまだ青空が広がっていた。風もなく絶好の登頂日和と言えるだろう。
いつものように地蔵尾根を登り、稜線を目指す。
高曇りの空の下で、いつもよりもくっきりとした北アルプスや乗鞍、御岳の山並み。光を浴びて白く輝いている。

稜線に出ると思いのほか風が強くなった。気温はとてつもなく低い!
目出帽とゴーグルで顔を完全武装する。今回参加していただいたお2人とは、年末の燕岳にもご一緒した。そして燕山荘の小屋まわりでの強烈な吹雪によって負った軽い凍傷のあとが、3人ともまだ頬にうっすらと残っている。
それなのにまたこんなに寒い雪の山へ、私たちは自ら好んでやってきた。
ああ、山の中の懲りない面々。

だがしかし、この美しい富士のシルエット! 
赤岳山頂でのうれしい握手。
行者小屋に下り立ち、胸に満ちてくる心地よい安堵感。

赤岳鉱泉から通い慣れた北沢を降りる頃、雪が降りはじめ、稜線はもはやガスに包まれていた。
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by uobmm | 2008-01-21 22:06 | 八ヶ岳(積雪期) | Trackback
2008年 01月 21日

南沢という入山路

2008年1月19日(土)
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はるばる沖縄からいらしたお二人と、沖縄とはおそらく30度以上温度差のある八ヶ岳へ。
赤岳鉱泉への入山は、今日ものんびりと南沢から。
南沢から行者小屋までの道のりは、北沢経由で赤岳鉱泉へ入るのと、登山地図のコースタイムの上ではそれほど差がないのだが、実際に歩くとそれ以上に長く感じる。だから今まではできるだけ北沢経由で入るようにしていた。
けれど、あまり急がず、山を楽しむつもりで歩いてみると、南沢経由の道にはなかなかの味わいがあることに最近気づいた。

途中、わずかに寄り道すれば、南沢小滝・大滝の迫力ある氷瀑が眺められる。
北沢に比べ山が静かで、森はいっそう美しい。
そして白河原付近で広がる横岳西壁の大伽藍と、青い空、黒々とした針葉樹林の美しい対比。

運のよいことに今日はカモシカの親子にも会うことができた。親子連れとは珍しい。子カモシカを見るのは私も初めてかもしれない。
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中山乗越から中山展望台へ寄り道する。
雪の時期、晴れた日のここからの眺めは本当に素晴らしい。
中山乗越からほんの5分も上がるだけなのに、これほど劇的な展望が開けるのだから驚きである。名づけて、「八ヶ岳のカラパタール」。エベレスト街道のカラパタールに行かれたことのある方なら、きっと賛同してくださるにちがいない。
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小さな“山旅”を終えて、今日の宿・赤岳鉱泉に到着。
週末の赤岳鉱泉はたいそうにぎやかだ。鉱泉名物の人工氷瀑「アイスキャンディー」でも、たくさんのクライマーが楽しそうに遊んでいた。
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by uobmm | 2008-01-21 00:02 | 八ヶ岳(積雪期) | Trackback
2008年 01月 16日

三条ノ湯から雲取山

2008年1月13日(日)~14日(月・祝)
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三条ノ湯に泊り雲取山へ行くことにする。
土曜日が東京は1日雨だったため、雲取山はさぞや新雪が積もっているだろうと思いきや、こちらも雨で、雪はほとんど積もらなかったようだ。
お祭から3㎞奥に入ったゲートでタクシーを降り、そこから三条ノ湯までちょうど2時間半で到着した。

三条ノ湯(三条小屋)に泊るのは初めてである。
冬場は登山者も少ないようで、連休中だが宿泊者は10名ほどだった。
男女交代で入浴をすませたあとは、みな一つの大部屋に入り、仲よく薪ストーブを囲む。
薪は宿泊者が自分たちで自由にくべる。ビールやカップ酒を飲み、自然に会話がはずんだ。
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鄙びた山あいの一軒宿。なんだか時間を遡ったかのようだ。
紅葉の時期など混雑することもあるだろうが、今は本当に静かである。
こんな静かな山の中で、ゆっくり熱い温泉につかり、薪ストーブの前で酒を飲むのは、とても贅沢なことなのかもしれない。

翌日は山頂でもまだ2~3㎝しか積雪のない雲取山に登り、鴨沢に下山した。
いずれまた三条ノ湯を訪れ、飛竜山に登ったり、違うコースを歩いてみよう。できれば今回と同じ静かな時期に。
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by uobmm | 2008-01-16 22:36 | 奥秩父 | Trackback
2008年 01月 14日

房総・鋸山(その2)

2008年1月9日(水)
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浜金谷の駅から15分も歩けば登山口に着く。港からでも30分かからないだろう。
急だが気持ちのよい石段の道を登っていけばすぐに展望が開け、先ほどフェリーを降りた金谷の港が望まれるようになる。

光る海、明るい日差し、みずみずしい樹木……。
房総の山は好ましい。
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文句なしにすばらしい眺望!
百尺観音、千五百羅漢道、日本一の大仏……。
鋸山はまぎれもなく名山だと思う。
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そして、梅の花。
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by uobmm | 2008-01-14 22:25 | ハイキング | Trackback