山について語るときに僕の語ること(What I Talk About When I Talk About Mountain)

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2008年 02月 15日

丹沢・塔ノ岳①

2008年2月13日(水)
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大倉の先から登山道を歩きはじめるとき、ふっと懐かしい気持ちにとらわれた。
小田急沿線に実家のある私にとって、丹沢は学生時代のホームグラウンドのような山。
もう四半世紀も前から、数え切れないくらい丹沢を訪れ、数え切れないくらい大倉尾根を登り下りした。そんな私なのに、今日の大倉尾根から眺める景色は、これまでで別格に美しく感じられる。
たくさんの雪と、完璧なまでに青く澄み渡った空のおかげであり、またそれだけが理由でもきっとないのだろう。
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本当は東北の蔵王に行く予定であった。天気がとびきり強い冬型となり、直前になって行き先を丹沢に変更したのである。正解であった。
今日のように強い冬型の気圧配置の日は、何も高い山に行って烈風に吹かれなくとも、近郊の1,000m台の山で十分に、いや十分すぎるほどに素晴らしい山を味わえることを知った。
……そこに登山ガイドさんが必要とされるかどうかは別問題として(笑)。

美しき一日のフィナーレとなる、塔ノ岳山頂に到着する。
美しい山々、美しい相模湾、そして富士……。
塔ノ岳からの眺めはこれほど素晴らしかったのだろうか……。
私はこれまで丹沢で、いったい何を見ていたのだろう……。
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今日の泊まりは塔ノ岳山頂に立つ尊仏山荘である。
山によっては山頂に小屋があることに違和感を覚えることもなくはないけれど、この広い山頂に立つ尊仏山荘は、まさにそこに在るべくして在る山小屋というべきだろう。
それにしても、この立地条件はすばらしすぎる。これほど見事な展望を小屋の中から味わえる小屋も、実はそれほどないのかもしれない。
今日の宿泊者は私たち含め8人。平和でくつろげる、よい山小屋である。

富士の山頂をかすめるように太陽が沈んでゆく。
(実は次の土曜日がダイヤモンド富士が見られる日なのであった!)。
ますます美しい色彩に包まれる空と山を撮ろうと、泊まり客たちは小屋と外を出たり入ったりしている。もちろん私もその一人だ。
外はしんしんと冷えてきた。
富士がシルエットになって美しくかげり、街の灯が緑色に輝きはじめる。
幸福な一日が暮れようとしていた。
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# by uobmm | 2008-02-15 01:08 | 雪山(その他の山域) | Trackback
2008年 02月 13日

金峰山

2008年2月11日(月・祝)
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私たちが金峰山を目指した連休の最終日、空は美しく晴れ渡り、穏やかな絶好の登山日和となった。
昨日私たちが瑞牆山に登る際、さらさらの新雪をかきわけつけた富士見平へのトレースも、たくさんの登山者に踏まれて、しっかりとした道に変わっている。

富士見平から金峰山に至る道を冬に歩くのは初めてだった。
廻り目平からのルートよりも長く、冬はあまり歩かれていないと思っていたのだが、どうやらそうでもないようだ。富士見平には5~6のテントが張られ、登山者も20名以上入っていた。
先行パーティーによってしっかりと踏み固められた道を、私たちはしんがりから快適に登らせてもらう。ツガやシラビソの針葉樹の森が美しかった。瑞牆山では感じなかったこの林の素晴らしさは金峰山の魅力であり、それはまた奥秩父を奥秩父たらしめている、この山脈の魅力でもある。

d0138986_1403512.jpgそして今日のコースの白眉は、森林限界を抜けてからの素晴らしい稜線漫歩だろう。右を見ても左を見ても、文句のつけようのない最高の展望が広がっている。
千代の吹き上げ付近の大岩ごろごろ地帯は、雪が乗ったらもっといやらしいのでは、と少し心配していたのだが、岩の間に雪がつまり、無雪期よりもかえって歩きやすいように感じられた。
金峰山の展望の素晴らしさはこのあいだも書いたけれど、今日のこのルートこそ、日本屈指の展望峰である金峰山の魅力を、いっそう強く感じられるコースであるのかもしれない。

静かな森の中を下っていく途中、生まれて初めてキツツキ(コゲラ?)の姿を見ることができた。
ドラミング(キツツキが木をたたく音)は山では時々耳にすることができるけれど、姿を目にすることはめったにできないのではなかろうか。
私たちがその木の真下を通ってもまったく意に介さず、無心に木をたたき続けるキツツキの姿を眺めながら、私はちょっとうれしかった。

# by uobmm | 2008-02-13 01:47 | 奥秩父 | Trackback
2008年 02月 11日

峰ノ松目沢

2008年2月9日(土)
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今年はあまり氷柱のできのよくない湯川で登った翌日、Mさんと私は八ヶ岳へ転進し、峰ノ松目沢へ。
天気予報は午後からの雪を伝えていたが、朝のうちはまだ青空が広がっていた。このところ降雪が続いており、沢にはたっぷり雪がたまっている。登山道からはずれるところでスノーシューをはいた。
今日は15時半に小淵沢駅で、合流するGさんを迎える約束のため、時間に余裕がない。F1の下にスノーシューと余分な荷物をデポしていつものように登攀を開始する。

d0138986_21492866.jpg峰ノ松目沢のよいところは、一つ一つの氷瀑の間隔が近いことだ。それでも、スノーシューからアイゼンにはき替えた私たちは、一つの氷瀑を越えてから次の氷瀑まで、奮闘的なラッセルを強いられる。時間にしたら、氷を登っている時間よりラッセルしている時間の方がずっと長いだろう。
それでもがんばってラッセル&クライミング、いやラッセル&クライミング&ラッセルをしながら2人で沢をつめ、最後の垂直の氷瀑までたどりつく。
この氷瀑は高さはさほどでもないが傾斜はきっちり垂直で、決して易しくはない。しかしMさんは迷わず中央の難しいラインにとりつき、しっかりと上まで登りきった。


ちらちらと降り出していた雪も、下るにしたがって本降りとなった。それはむろん、私たちの心を暗くするものではない。それよりも悪天候の間隙をぬい、短い時間の中で首尾よく1本のルートを登れた喜びが私たちの胸を満たしていた。

# by uobmm | 2008-02-11 22:11 | 八ヶ岳(アイス) | Trackback
2008年 02月 06日

彼らの足跡

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必要があって、学生から昨年度の活動中の写真を10点ほど送ってもらった。
学生というのは私の出身母体であり、また私が現在監督をしている法政大学山岳部の学生のことである。

写真は昨年の3月に学生2人が出かけたカナダでのアイスクライミング。
写真を見たらむしょうに行きたくなってしまった。
私も2年前にカナダへアイスクライミングに行ったが、期間が短く、また異常に暖かくて氷の状態が悪く、ゲレンデのようなエリアでドライルートを登ってきただけにとどまった。ハンガーボルトの打ってある岩をバイルとアイゼンで登るのは日本ではなかなか経験できないものだし、それはそれで面白かったが、カナダの真価はやはり、あの広大な大自然に囲まれた環境の中で、日本にはないスケールの長大な氷瀑を登ることだろう。

d0138986_0544891.jpg彼らは昨シーズンまでアイスクライミングの経験はほとんどなかった。12月中旬に八ヶ岳の裏同心ルンゼに連れて行って、私が最初の手ほどきをしたのである。
それが3月にはカナダに行ってポーラーサーカスなどの有名ルートを登って帰ってきた。
これは何も彼らがすぐれているというわけではなく、そういう時代になったということなのである。

それはともかく……。
また行きたいなあ……。

# by uobmm | 2008-02-06 01:15 | その他 | Trackback
2008年 02月 04日

茅ヶ岳

2008年1月31日(木)
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そして茅ヶ岳に登ることにした。
岩根山荘で半日ぼけーっと過ごすのも魅力的に思えたが、今日の気圧配置は冬型であり、東京方面に戻っていけば晴れているのは確実だった。
野辺山あたりを車で走る頃には、先ほどの雪がうそのように晴れ渡り、南アルプスが美しくのぞまれた。八ヶ岳はまだ雲の中だったが、もはや絶好の登山日和といってよい。
富士山も見えてきた。
東京方面に戻り、中央線沿いの低山にでも登ろうかと考えていたのだが、この晴れ方を見て茅ヶ岳に決めた。

d0138986_21584912.jpg登山口の深田公園駐車場に着くと、昨日の瑞牆山よりさらに雪が少なかった。枯れ葉を踏んで歩く道は、まるで晩秋の山のようである。
空には雲いっぺんも見あたらない。素晴らしい登山日和となったものだ。
昨日の瑞牆では5~6人パーティー1組に出会ったが、今日の茅ヶ岳は私たちの貸し切りのようである。茅ヶ岳で人に出会わないというのは初めてだ。冬の平日ならば珍しいことではないのかもしれないが。

明るい日差しに包まれた山頂には、うららかな時が流れていた。
茅ヶ岳に登るのは3度目だが、よい山頂だなあと改めて思う。
適度な広さでくつろげる。そして眺めはむろん最高である。かつて“ニセ八つ”などと呼ばれたその大きな山容は、八ヶ岳と見まがわれるような独立した山ゆえに、その展望は秀逸である。

いつもはここから金ヶ岳まで縦走するのだが、今日は茅ヶ岳だけの往復なのでいっそうリラックスした気分になれる。
八ヶ岳はまだ厚い雲の中だ。あの稜線は今日もまた吹いていることだろう。こんなに近くなのにずいぶんと違うものである。

さて、そろそろ下ることにしようか。
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↑登るはずだった金峰山(左)と、登ることになった茅ヶ岳 (白州にて撮影)

# by uobmm | 2008-02-04 22:24 | 雪山(その他の山域) | Trackback
2008年 02月 04日

岩根山荘、金峰山のことなど……

2008年1月30日(水)~31日(木)/2006年12月24日(日)
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瑞牆山から下山し、岩根山荘へと向かう。瑞牆山荘からの林道の下り、信州峠を越えてからの下りが道が凍っていて怖かった。
岩根山荘は日本のクライミングの聖地・廻目平(まわりめだいら)のすぐ下にある。2年ほど前から敷地内でクライミングジム「オンサイト」も営業し、クライマーたちに親しまれている。静かで落ち着いた雰囲気が好ましく、食事もとてもおいしい。
冬の廻目平を訪れる人は少なく、金峰山荘も閉じているが、この時期に金峰山に登る人にとっては、岩根山荘が通年営業しているのはありがたい。
夏ならば大弛峠から比較的たやすく登ることができる金峰山だが、冬に登るなら廻目平から往復するのが一般的だろう。朝、東京などを発つよりも岩根山荘に前泊すれば無理がない。
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冬の金峰山に登る人はどれくらいいるのだろう? 八ヶ岳などに比べれば圧倒的に少ないことだけは確かである。
金峰山は冬もとても素晴らしい。取りたてて危険なところもなく、レベルで言えば冬の硫黄岳と同等くらいである。何より山頂からの展望が極上である。冬の八ヶ岳からの展望が素晴らしいのは周知の通りだが、金峰山からのそれは、あるいは八ヶ岳以上なのではあるまいか。なにしろ金峰山からは、八ヶ岳も、眺めることができるのだから。標高2,500mを有するこの奥秩父の盟主には、冬ももっと登山者が訪れて然るべきだと私は思う。
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さてところで、アップした写真はすべて昨冬、金峰山に登ったときのものである。(スミマセン)

翌朝、起きてみたら、岩根山荘では雪が舞い、金峰山方面はグレーの雲に包まれていた。天気予報は一応晴れだったのだが、冬型がそうとう強くなったのだ。
さあ、どうしよう……?
薪ストーブの焚かれた岩根山荘の食堂で、朝食のあとのコーヒーをすすりながら、このままこの雰囲気のよい食堂で、ゆっくりとくつろぐのも悪くないなと、私は思った。

# by uobmm | 2008-02-04 00:11 | 奥秩父 | Trackback
2008年 02月 02日

瑞牆山

2008年1月30日(水)
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瑞牆山にはかれこれ10回近く登っているが、冬に来るのは初めてだった。特に理由はないのだが、あまり冬に行こうとは考えない山のような気がする。雲取山や金峰山などは積雪期の登山もよく考えるのけど、なぜだろう?

瑞牆山荘から歩き出す道は、木々が葉を落とした今も、いつものように清々しかった。高原の空気漂うこの辺りの雰囲気はいつ来ても好ましい。
積雪は5センチあるかないかで、こんなに雪が少ないとは思わなかった。

あいにくぱっとしない天気だったが、頂上ではそれでも雄大な展望がが私たちを待っていてくれた。まるで空の中に立っているかのような気持ちになる、この岩の舞台さながらの山頂は、瑞牆ならではの素晴らしさだろう。
天気がよい日に、冬の瑞牆山頂からの展望を再び眺めに訪れてみたい。
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# by uobmm | 2008-02-02 14:06 | 奥秩父 | Trackback
2008年 01月 29日

山岳ガイドの喜び

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自分の好きなことを仕事にできていいですね。
お客さんなどから時おりそんな言葉をいただく。
自分が好きな、自分が人よりも得意な、山登りを仕事にできたという意味ではまったくその通りだし、私は恵まれていると思う。
けれども、仕事で山に行けてわー楽しい!とか、仕事で好きなクライミングできてチョーハッピー!というほど、さすがにそこまで単純ではない。
なぜなら、私たちの仕事はまずお客さんの安全を守ることであり、その次にお客さんに楽しんでいただくことだからだ。自分が楽しむことが目的ではないのである。
それじゃあ好きな山に行っても楽しくないのか?と言われれば、それはもちろん楽しい(笑)。

d0138986_0544950.jpgただ、プライベートな山行と、ガイドとして仕事で行く登山とでは、喜びの性質が異なるのだ。
山岳ガイドの喜びは、自分自身が好きな山に行ける喜びではなく、何よりもお客さんが心から喜んでくれたことによって生みだされる。
こう書くとひじょうに善人ぶって聞こえるかもしれないが、このことは山岳ガイドという職業のきわめて本質的な部分に関わることでないかと思うのである。
だから私は、行く山は正直どこでもよい。難しい山でもいいし、易しい山でもいい。ヒマラヤでもいいし、ウラヤマでもいい。ガイドで行くのに、簡単な山だからつまらないとは今まで思ったことがない。

例えば、すごくおいしいお店を発見したとする。初めてそのお店に行き、素晴らしい料理を食べ、大満足する。次に、そのお店に友人を連れて行く。そして友人が、「このお店、最高! ほんとおいしい! よくこんないい店、知ってましたねえ!」と喜んでくれたとしたら、そのことがそこで食べるおいしい料理よりも、大きな喜びをもたらしてくれはしないだろうか? また逆に、友人がたいして感動してくれなければ、いくら自分にとっておいしい料理であっても、今度はほとんど満足感を味わえないのではあるまいか。山岳ガイドの喜びはちょっとこれに似ていなくもない。(なんて、変なたとえですみません)。

今から何年も前に行った秋の雲取山のことを、あの時の雲取山はすばらしかった、と折りにふれ口にするお客さんがいる。数年前にご一緒した甲武信岳山頂からの展望の素晴らしさを、今でも感動的に語ってくれる方がいる。
雲取山も甲武信岳も、多くの登山者にとっては山岳ガイドを必要としないレベルの山だろう。
「まさか、自分が雲取山に行けるなんて夢にも思わなかった」。
しかし、あるレベルの登山者たちにとっては、雲取山や甲武信岳でも大変な山であり、そんなふうに心から喜び、感謝してくれるのだ。
それこそガイド冥利である。
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「ガイドの職業こそ、こよなく美しい。けがれを知らない土地でその職務を果たすのだから。
いまの世の中には、もうわずかなものしか存在していない。寒さも、風も、星も。すべては打ち壊されてしまった。だが山では、忘却の静けさの中で……     ――略――

ガイドは彼(自分)のため登るのではない。彼の山々の扉をほかの人たちに開くのだ。どの登攀がとくにおもしろいとか、どこの曲がり角で眺めが急にすばらしくなるとか、どこの氷の山稜はまるでレース飾りのようだというようなことを知っているが、口には出さない。彼の報いは、相手がそれを発見した時の笑顔の中にあるのだから」

ガストン・レビュファ 「ガイドの職業」より
(『山こそ我が世界』所収  ガストン・レビュファ著/近藤等・訳 山と渓谷社)

# by uobmm | 2008-01-29 00:08 | エッセイ | Trackback