天上山に登った翌日、神津島の共同墓地を訪ねた。
そこにはちょっと不思議な光景が広がっていた。
お墓というお墓に極彩色の美しい花が供えられているのである。
ちょうど墓参りに来ていた女性が気さくに話をしてくれた。
ここは島で唯一の墓地であり、お年寄りたちは毎日(!)このお墓にお参りし、新しい花を供えるのだという。
花の半分くらいは造花だったが、半分は生花である。しおれている花はないようだった。
多くのお年寄りがそのために家の庭で花を育てたりしているそうだ。
そう、この墓地はいつも、こんなカラフルで美しい、そしてちょっと現実離れした花々に包まれているのである。
藤原新也の写真に出てくる風景みたいだった。
彼岸。
その言葉が脳裏に浮かんだ。
墓守りにしろお葬式にしろ、何事にも簡素な本土と比べ、この島では大変なんですよ……。
本土から神津島にお嫁に来たという、まだ50歳前くらいに見えるその女性がそんなことを語った。
夏には若い観光客や釣り客でにぎわう神津島の、もう一つの表情がそこにはあった。