山について語るときに僕の語ること(What I Talk About When I Talk About Mountain)

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2008年 02月 04日

岩根山荘、金峰山のことなど……

2008年1月30日(水)~31日(木)/2006年12月24日(日)
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瑞牆山から下山し、岩根山荘へと向かう。瑞牆山荘からの林道の下り、信州峠を越えてからの下りが道が凍っていて怖かった。
岩根山荘は日本のクライミングの聖地・廻目平(まわりめだいら)のすぐ下にある。2年ほど前から敷地内でクライミングジム「オンサイト」も営業し、クライマーたちに親しまれている。静かで落ち着いた雰囲気が好ましく、食事もとてもおいしい。
冬の廻目平を訪れる人は少なく、金峰山荘も閉じているが、この時期に金峰山に登る人にとっては、岩根山荘が通年営業しているのはありがたい。
夏ならば大弛峠から比較的たやすく登ることができる金峰山だが、冬に登るなら廻目平から往復するのが一般的だろう。朝、東京などを発つよりも岩根山荘に前泊すれば無理がない。
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冬の金峰山に登る人はどれくらいいるのだろう? 八ヶ岳などに比べれば圧倒的に少ないことだけは確かである。
金峰山は冬もとても素晴らしい。取りたてて危険なところもなく、レベルで言えば冬の硫黄岳と同等くらいである。何より山頂からの展望が極上である。冬の八ヶ岳からの展望が素晴らしいのは周知の通りだが、金峰山からのそれは、あるいは八ヶ岳以上なのではあるまいか。なにしろ金峰山からは、八ヶ岳も、眺めることができるのだから。標高2,500mを有するこの奥秩父の盟主には、冬ももっと登山者が訪れて然るべきだと私は思う。
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さてところで、アップした写真はすべて昨冬、金峰山に登ったときのものである。(スミマセン)

翌朝、起きてみたら、岩根山荘では雪が舞い、金峰山方面はグレーの雲に包まれていた。天気予報は一応晴れだったのだが、冬型がそうとう強くなったのだ。
さあ、どうしよう……?
薪ストーブの焚かれた岩根山荘の食堂で、朝食のあとのコーヒーをすすりながら、このままこの雰囲気のよい食堂で、ゆっくりとくつろぐのも悪くないなと、私は思った。

# by uobmm | 2008-02-04 00:11 | 奥秩父 | Trackback
2008年 02月 02日

瑞牆山

2008年1月30日(水)
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瑞牆山にはかれこれ10回近く登っているが、冬に来るのは初めてだった。特に理由はないのだが、あまり冬に行こうとは考えない山のような気がする。雲取山や金峰山などは積雪期の登山もよく考えるのけど、なぜだろう?

瑞牆山荘から歩き出す道は、木々が葉を落とした今も、いつものように清々しかった。高原の空気漂うこの辺りの雰囲気はいつ来ても好ましい。
積雪は5センチあるかないかで、こんなに雪が少ないとは思わなかった。

あいにくぱっとしない天気だったが、頂上ではそれでも雄大な展望がが私たちを待っていてくれた。まるで空の中に立っているかのような気持ちになる、この岩の舞台さながらの山頂は、瑞牆ならではの素晴らしさだろう。
天気がよい日に、冬の瑞牆山頂からの展望を再び眺めに訪れてみたい。
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# by uobmm | 2008-02-02 14:06 | 奥秩父 | Trackback
2008年 01月 29日

山岳ガイドの喜び

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自分の好きなことを仕事にできていいですね。
お客さんなどから時おりそんな言葉をいただく。
自分が好きな、自分が人よりも得意な、山登りを仕事にできたという意味ではまったくその通りだし、私は恵まれていると思う。
けれども、仕事で山に行けてわー楽しい!とか、仕事で好きなクライミングできてチョーハッピー!というほど、さすがにそこまで単純ではない。
なぜなら、私たちの仕事はまずお客さんの安全を守ることであり、その次にお客さんに楽しんでいただくことだからだ。自分が楽しむことが目的ではないのである。
それじゃあ好きな山に行っても楽しくないのか?と言われれば、それはもちろん楽しい(笑)。

d0138986_0544950.jpgただ、プライベートな山行と、ガイドとして仕事で行く登山とでは、喜びの性質が異なるのだ。
山岳ガイドの喜びは、自分自身が好きな山に行ける喜びではなく、何よりもお客さんが心から喜んでくれたことによって生みだされる。
こう書くとひじょうに善人ぶって聞こえるかもしれないが、このことは山岳ガイドという職業のきわめて本質的な部分に関わることでないかと思うのである。
だから私は、行く山は正直どこでもよい。難しい山でもいいし、易しい山でもいい。ヒマラヤでもいいし、ウラヤマでもいい。ガイドで行くのに、簡単な山だからつまらないとは今まで思ったことがない。

例えば、すごくおいしいお店を発見したとする。初めてそのお店に行き、素晴らしい料理を食べ、大満足する。次に、そのお店に友人を連れて行く。そして友人が、「このお店、最高! ほんとおいしい! よくこんないい店、知ってましたねえ!」と喜んでくれたとしたら、そのことがそこで食べるおいしい料理よりも、大きな喜びをもたらしてくれはしないだろうか? また逆に、友人がたいして感動してくれなければ、いくら自分にとっておいしい料理であっても、今度はほとんど満足感を味わえないのではあるまいか。山岳ガイドの喜びはちょっとこれに似ていなくもない。(なんて、変なたとえですみません)。

今から何年も前に行った秋の雲取山のことを、あの時の雲取山はすばらしかった、と折りにふれ口にするお客さんがいる。数年前にご一緒した甲武信岳山頂からの展望の素晴らしさを、今でも感動的に語ってくれる方がいる。
雲取山も甲武信岳も、多くの登山者にとっては山岳ガイドを必要としないレベルの山だろう。
「まさか、自分が雲取山に行けるなんて夢にも思わなかった」。
しかし、あるレベルの登山者たちにとっては、雲取山や甲武信岳でも大変な山であり、そんなふうに心から喜び、感謝してくれるのだ。
それこそガイド冥利である。
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「ガイドの職業こそ、こよなく美しい。けがれを知らない土地でその職務を果たすのだから。
いまの世の中には、もうわずかなものしか存在していない。寒さも、風も、星も。すべては打ち壊されてしまった。だが山では、忘却の静けさの中で……     ――略――

ガイドは彼(自分)のため登るのではない。彼の山々の扉をほかの人たちに開くのだ。どの登攀がとくにおもしろいとか、どこの曲がり角で眺めが急にすばらしくなるとか、どこの氷の山稜はまるでレース飾りのようだというようなことを知っているが、口には出さない。彼の報いは、相手がそれを発見した時の笑顔の中にあるのだから」

ガストン・レビュファ 「ガイドの職業」より
(『山こそ我が世界』所収  ガストン・レビュファ著/近藤等・訳 山と渓谷社)

# by uobmm | 2008-01-29 00:08 | エッセイ | Trackback
2008年 01月 27日

僕が山をはじめたわけ

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私が山をはじめた動機はわりと単純である。
それはきれいな景色が見たかったからだ。

山に行けばきっときれいな景色が見られるのだろう……。
3,000mの高山では“雲海”というものが見られるらしい……。
雪山では夏山とまたちがう、夢のような景色が見られるかもしれない……。
まだ山登りを知らぬ頃、山の雑誌や本を読み、そんな憧れをふくらませていた。

大学山岳部1年生時の夏山合宿で2年上の先輩に、
「松原は景色見てきれいだ、きれいだって、そればかり言ってるな」
と、なかば感心、なかばあきれたような口調で言われたのを覚えている。
剱岳の三ノ窓でのことだった。
自分で言うのも何だけど、私は美しい風景に対する感受性が、昔から人より少し高いと思う。それはおそらく遺伝的に持っている体質のようなものだ。

本格的に登山をはじめ、美しい風景を見ること以外の、山のさまざまな魅力も幸いにして知ることができたけれど、その“景色感動体質”があったからこそ、私は今までこれほどまでに深く、長く、山とかかわって生きてきたのだと思う。
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# by uobmm | 2008-01-27 00:54 | エッセイ | Trackback
2008年 01月 25日

峰ノ松目沢

2008年1月25日(金)
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強烈に冷え込んでいる。今朝は茅野駅でマイナス15度だったそうだ。
そして八ヶ岳では新雪が40~50㎝。今冬初めての多量の降雪である。
こんな時のアイスクライミングは行き先を選ばないとラッセルが大変だし、それ以上に雪崩が怖い。それで峰ノ松目沢に行くことにした。というのも、友人のガイドが峰ノ松目沢を昨日登っており、大丈夫との情報を得られたからだ。

d0138986_232432.jpg降雪のあとの山は何かと大変だが、景色の美しさは格別である。雪に被われた木々は、さながらクリスマスの飾りか何かのように、完全無欠の純白である。
冬型が強く、八ヶ岳は荒れているかと思っていたが、空はほとんど快晴、日差しも思ったより暖かだった。むろん稜線上は雪煙たなびき、かなり吹いていることがうかがわれたが、私たちのいる小さな沢の中は風もなく、絶好のアイスクライミング日和である。

静かな沢をつめ、美しい樹氷と空を仰ぎながら、Aさんとの1年ぶりのアイスクライミングを楽しんだ。今晩赤岳鉱泉でゆっくり泊り、明日もう1日登れるなら言うことはないのだが、今日は残念ながら日帰りである。

金色に輝く横岳西壁に見送られて、またぐっと気温の下がりはじめた山を足早に下った。
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# by uobmm | 2008-01-25 23:21 | 八ヶ岳(アイス) | Trackback
2008年 01月 24日

城山~発端丈山

2008年1月24日(木)
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発端丈山(ほったんじょうやま)という風変わりな名前の、なおかつ有名でもない伊豆の低山は、本州にあまたある富士の展望峰の中でも、あるいはもっともすぐれた頂の一つかもしれない。

クライマーにはお馴染みの伊豆・城山(じょうやま)から発端丈山へと歩き、内浦湾へと下る小さな縦走路は、近年とみに人気の高まってきた沼津アルプスに勝るとも劣らない、すてきな冬の散歩道だ。
東京に初雪が降った翌日の今日、青空は戻ったが気圧配置は強い冬型となり、この伊豆の山でもゴオゴオと音を立てて北風が吹き荒れている。しかし、風が当らない場所ではその日差しは春のように暖かだった。

こじんまりとした城山の山頂から素晴らしい展望を楽しみ、杉林の中の緩やかな道を発端丈山へと辿る。
うれしくなるような明るい日差しを浴びて、発端丈山への最後の坂を登りつめると、そこにはこれまでに見たどんな富士よりも素晴らしいと思えるほどの絶景が広がっていた。
雪をいただいた真白き富士の前に広がる青い海。美しい海岸線。ほとんど完璧な景観と言っても過言ではないだろう。

知られざる富士の最高の展望台。それがこの発端丈山だ。
富士山が白く輝く季節、好天を狙ってぜひ登ってほしい文句なしの名山である。
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# by uobmm | 2008-01-24 21:39 | ハイキング | Trackback
2008年 01月 24日

雪山研修

2008年1月17日(木)~18日(金)
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登山ショップの方々と八ヶ岳で雪山の研修。
赤岳鉱泉周辺でまずは雪崩について。積雪層の観察、雪崩ビーコンの使用法、埋没体験等々。
各社のビーコンを用意してきてくれていたので、使い比べることができ、私にとってもすごく参考になる。
小屋に戻り、雪山装備のことなどについてさらに討議。

翌日は硫黄岳に登る予定だが、朝雪が降っていたので、小屋内で背負い搬送、ツェルト搬送の研修。
少し天候が回復してきたところで硫黄岳に向けて出発した。

私はこの研修の講師なわけだが、教えながら学ぶこと、そして実際に教えられることもたくさんある。
講師という立場に立つのは楽なことではないけれど、職業として山岳ガイドをする以上は、定期的にこのような経験を持つことが、自分のためにもとても大切なことなのだと思った。
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# by uobmm | 2008-01-24 00:28 | 八ヶ岳(積雪期) | Trackback
2008年 01月 22日

湯河原幕岩

2008年1月15日(火)
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Yさんは以前少しだけクライミングの経験がある。近郊の岩場で何度か練習し、二子の中央稜などのマルチピッチも登った。けれどお仕事の都合などもあり、やりたい気持ちはあったものの、クライミングから遠ざかってしまった。

そして今日は、Yさんが7年ぶりにクライミングを再開した記念すべき日となった。
これからは時間もある程度つくれそうだし、またやっていきたいそうだ。
てんとうむしロックのかわいらしい岩を、何とか上まで抜けたYさんは心からうれしそうだった。自分がこの世界に再び戻れたことを心底喜んでいるように見えた。

Yさん、これから一緒にクライミングしましょう! 今年はきっと北岳や剱の岩にも行けますよ。
そうそう、その前に、今回トライした「アナザガール」(5.10a)が登れたらいいですね。

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# by uobmm | 2008-01-22 22:06 | クライミング | Trackback